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    装丁夜話<第3夜 『妖精の国』>

    • 2010.11.05 Friday
    • 23:12
    店で、お気に入りの本が売れるとうれしい。

    特に思い入れのない本にくらべたら、
    10倍・・・いや、もっとうれしい。

    でも、それと同じくらい、さびしい気持ちもある。

    「古本」というのは、
    大部分が、すでに絶版になっていて、
    今では、買おうと思っても、新刊書店では手に入らない本である。
    「手に入るなら値段に糸目はつけない」
    という剛毅な気持ちでいても、
    「ないものはない」んであるよ。

    あたしが、漫画も文学も好きだから、
    最新のランキングに入ってるような、
    人気コミックスや文芸の単行本も扱ってはいるが、
    それでも、店の本の7割は、
    もう絶版または版元品切れになっている本だ。

    売れてしまったら、
    「たぶんもう、
    この後の人生で再会することはないかもしれないなあ」

    という本は、
    お別れするとき、かなり切ない。

    そんな本の1冊が売れた。

    どうしても、セットはくずしたくないから、
    バラ売りはしていない
    「復刻 世界の絵本館―オズボーン・コレクション―」
    の中で、
    たまたま数冊だけバラで入手した本の中のひとつ。

    それが、


    『妖精の国』(原題『In Fairy Land」1870)

    素晴らしく綺麗な絵本である。

    素敵な装丁の本、装丁にまつわる本を紹介する
    『装丁夜話』のカテ。
    ここで、紹介して、送りだそうではないか。

    オズボーン・コレクションの復刻版はどれも素晴らしいけど、
    やはり一番の目玉と言えるのが、この超大型豪華本。

    「妖精国の宮廷絵師」
    と呼ばれた、
    リチャード・ドイル
    (あの「シャーロック・ホームズ」のコナン・ドイルのおじにあたる)
    が、
    当代屈指の木版印刷師エドマンド・エヴァンズと組んで世に出した、
    妖精絵本の一大傑作だ。

    写真ではそれほどデカく見えないが、
    「この時代で最も大きな木版画に仕上げたい」
    というドイルの希望で、
    かなり大きなサイズで作られた。
    あたしが計測したところ、
    387×278mm
    である。
    「オズボーン・コレクション」の中でも、
    これが一番大きい。
    同じドイルの挿絵を使った、
    日本語訳の『妖精の国で』(こちらも絶版)が、
    もっと小さいサイズだったことを思えば、
    そういう意味でも貴重な本。

    緑色のクロース表紙と背に金箔押し、


    三方金(天地小口が金色)という豪華なつくり。


    表紙と背の箔押しのデザインと、


    扉のレタリングまでドイル自らが手がけている。


    函入り。
    函のデザインなどのセット全体の装幀は安野光雅さんが担当。
    この美しい飾り枠のデザインは、
    1冊1冊の絵本で全部違うのだ。

    中身は、



    幻想的なタッチで描かれた
    妖精、森の植物、鳥たち、昆虫の絵。




    16枚の挿絵は、8色から12色が使われていて、
    当時、木版画出版の最大にして最高のものだったのではないだろうか。

    普通、絵本というのは、
    最初に物語があって、それを絵をつけるわけだが、
    この本に限っては、
    最初に「絵」ありき、
    であった。

    妖精を描いたドイルの絵が出来上がったあとで、
    アイルランド出身の詩人ウィリアム・アリンガム
    依頼されて詩をつけたという。
    なので、出版までに5年もかかったらしい。

    1870年に出版された、この本。
    原書は、イギリスでも稀少になってきているかも。

    1979年に刊行された、この本を含む、
    ほるぷ出版の『復刻 世界の絵本館―オズボーン・コレクション―』
    は、
    1981年には、英語圏向けにボードリー・ヘッド社から販売された。
    すごい、逆輸入だぞ。(笑)
    日本の印刷・復刻技術の優秀さを示すものであるな。
    イギリスでアンティーク絵本だと思って手に取ってみたら、
    ほるぷ出版の復刻版だったりして。

    海外でも、日本でも、
    もうこんな豪華な本は、作れないかもしれない。
    お金かかるし、採算取れないだろうし。

    書物がとても貴重で高価で、
    その分、惜しげもなく贅を尽くして、
    芸術品の域にまで達していた、
    古き良き時代の空気を堪能できる本である。

    装丁夜話<第2夜 和田誠>

    • 2010.10.25 Monday
    • 17:37
    昨日、唐突に思いついた新カテ「装丁夜話」だけど、
    できれば、『千夜一夜物語』シェヘラザードみたいに、
    長く語り続けていけたらいいな、と思っている。

    さて。
    実質的な、第1回は、
    大好きな大好きな本で始めよう。

    前に、ジャケ買いならぬ、カバー買いの話として、
    鶴田謙二のエマノンを紹介したけど、
    「この人が装丁(ブックデザイン)を担当してたら、
    思わず手にとってしまう。
    (所持金さえあれば)かなりの確率で買ってしまう」

    と、
    あたしが思うのが、和田誠だ。

    文庫や新書のレーベル自体の基本デザインや、
    シリーズ物の装幀の多い菊地信義と比べても、
    私物に占める「和田誠装丁比率」は、
    異常に高い。

    ご本人の著作が好きなこと、
    星新一、村上春樹、谷川俊太郎、小林信彦、東海林さだお、丸谷才一
    といった好きな作家さんの装丁を、
    たまたま和田さんが手がけることが多かった、
    というのはあるけど、
    それ以外にも、
    「和田さんが装丁をしているから」
    という理由のカバー買いも多数。

    和田さんの装丁の仕事を、敬愛している。

    今日、紹介するのは、


    『表紙はうたう―和田誠・「週刊文春」のカヴァー・イラストレーション』
    (文藝春秋)


    「週刊文春」創刊50周年記念出版として、
    2008年に刊行された画集である。

    刊行時点で、「週刊文春」の表紙を描き続けて31年
    病気や怪我で休んだことは、31年間一度もないという。
    それは2010年現在も続いていて、
    33年という、とてつもない記録になっている。

    この31年間の仕事を、

    郵便
    日本あちらこちら
    動物置物
    十二支

    植物
    人形

    映画
    怪奇・SF
    楽器



    動物たち
    文字
    ゲーム
    星座
    天体・気象
    魚介類
    エイプリル・フール
    スポーツ
    看板
    抽象
    地図
    キッチン
    食べる
    話の続き
    クリスマス
    これは何だ
    方観音
    外国の旅


    とジャンル分け、自身の作品解説をつけて、ロゴなしで掲載した
    原画560枚
    後半には、
    描き始めた1977年5月12日号から2008年9月25日号まで、
    1558点「表紙全カタログ」を収録。

    あたしのお気に入りの原画。


    古本屋だから、気になったのは、これ。
    4月23日のサン・ジョルディの日(本の日)
    にちなんでエクスリブリス(蔵書票)を描いたもの。
    エクスリブリスは、愛書家が自分の蔵書に貼るために特注で作る、
    切手のような紙で、
    このイラストに描かれている名前は、
    「週刊文春」歴代編集長11人の名前。


    「鳥」ジャンルには、
    ペンギンもいるぞよ。

    この画集の見所は、その技法。

    和田誠のイラストといえば、


    こーいうのや、


    こーいうのや、


    こんな感じのを思い浮かべる人が多いと思う。

    くっきりした黒の描線で描かれるモノクロの、
    似顔絵やイラストや、
    それに色をつけたもの。
    単純な線にデフォルメしながらも、人や物の特徴をとらえた線画。

    この「週刊文春」の仕事を始めるときに、
    「それまで使わなかった手法で描いてみよう」
    と決めた、
    グァッシュ(不透明水彩)で丁寧に描き込む手法は、
    「貞操観念」のように、
    『「週刊文春」以外のお客さんには出してないメニュー』
    となった。

    それをまとめて見られるのは、ファンにはうれしい。

    しかし、圧巻は、やはり「表紙全カタログ」だな。

    イラストレーターとしての和田さんも好きで、
    前から、ブックデザインやグラフィックデザインの一部としての絵、
    ではなく、原画を見てみたい、と思っていたのだが、
    実際に、原画と表紙の両方を見たら、
    装丁家(ブックデザイナー)としての和田さんの力に、
    改めて、気付いた。
    なんてこったい。

    この仕事を引き受ける際に、
    和田さんが編集部に要求したことは、ふたつ。
    「デザインは自分でやりたい」
    「誌名のロゴを変えるなら、ロゴもデザインしたい」

    ということ。

    そして、表紙を見てみると、
    ロゴの色や、
    何月何日号、定価の配置などが、
    イラストと合うように絶妙にデザインされていて、
    絵を単体で見るよりも、表紙として見た方が、
    すべてのバランスが、完璧におさまっているのである。


    これは今週号の「週刊文春」の表紙。

    和田さんの本の装丁が素晴らしいのは、
    「自分の絵は自分でデザインするのが最良だと思っている」
    という和田さんが、
    イラストレーター和田誠の絵を、
    デザイナー和田誠がデザインする、

    ことからきているのだと、
    実感した。

    今まで、
    好きな絵師さん、イラストレーターさんが、
    表紙を担当しているのに、
    それほど、食指の動かない本、というのにも出会った。

    各社の文庫、新書やテーマを持ったシリーズ物など、
    フォーマットが決まっていて、デザインに制限があったせいもあるし、
    普通は、表紙絵とブックデザインは別の人が担当するから、
    その相性やセンスの違いのせいもあって、
    絵の魅力が最大限に引き出される装丁にはならなかった
    ということなのだろう。

    自分で描き、自分でデザインする、
    のであれば、そういう齟齬は、ない。
    ロゴや色や素材や、あらゆるものに生まれる統一感。
    それがあるから、和田さんの本は、
    美しくて、楽しいのだな。

    ここで、エピソードをひとつ。
    雑誌の場合は広告などが入るから別だが、
    単行本などの場合、
    もちろん、ブックデザインには背表紙も入る。
    背表紙に絵を配したのも多い。
    ここに通常は、印刷されるバーコード
    和田さんは、デザインを損なうから、
    これが好きではないようで、
    ある時期から、カバーや本体にバーコードを入れないようになった。
    そのため、装丁の仕事が減ったらしいが、
    この本の背表紙もISBN番号のみで、
    バーコードは帯に印刷されている。
    こういうこだわりも、あたしは好きだ。

    最後に。
    ひとつひとつのイラストには、
    古今東西の「歌」「曲」のタイトルが付けられていて、
    映画やジャズにも造詣の深い和田さんが選んだ曲名を、
    追っていくのも、楽しみ。
    刊行記念のイベントでは、
    プロジェクターで表紙を投影しながら、
    絵にちなんだ音楽を演奏するというコンサートも行われたとのこと。

    和田さんの装丁関係の本は、他にもあって、
    これから紹介していきたいけど、
    この本は、ほんとに素敵。
    是非、一度手に取ってみてほしい。

    *上の文章では、あえて「そうてい」(ブックデザイン)のことを、
    「装丁」「装幀」に使い分けている。
    これは、著作などを読む中で、
    ご本人が使われる用語を尊重してのこと。
    「釘の象形文字の丁の字は、釘を使わないが、
    紙を合わせて本に仕立てるという匠の仕事のイメージ」
    「装丁」を使う和田さん。
    一方、菊地さんは、ご自身で「装幀者」を名乗り、
    著作の表記もすべて「装幀」で統一されているから。

    装丁夜話<第1夜 はじめに>

    • 2010.10.23 Saturday
    • 21:37
    あい。
    またまた、新カテ登場。

    ここのところ連続で、
    カバー下、カバー裏、帯、表紙などコミックスの装丁の話を
    してきたけど、
    佐藤秀峰さんの記事を書いてるときに、
    心から感じたことがあった。

    あたしは、「本」が好きだ!!

    いやまあ、何をいまさらなんだけど(笑)

    でも、知識を得たり、物語を楽しんだり、絵を見たり、
    するために本を読むっていうことと、
    「本が好き」
    っていうのは、
    必ずしも、イコールではない。

    「勉強したい」「小説を読みたい」「漫画の続きが気になる」
    「絵を見たい」「写真を見たい」
    など、いろんな理由で人は本を手にするけど、
    表現が多様になった現在では、
    それらを楽しむ手段は、他にもいくらでもあるのである。

    インターネットの普及で、
    これからは、どんどん電子書籍で本を楽しむ人が増えるのは必至。
    それ以外にも、
    ドラマCDや朗読などの音声での表現もあるし、
    絵や写真といった画像についても、
    紙への印刷に限らず、
    画像、映像をDVDなどのかたちで保存して、
    よりリアルに見ることだってできるわけだよね。

    ただ、本から得たいものが、
    「情報」や「知識」や「娯楽」なのであれば、
    そのかたちが別のものになっても、
    不自由しない人はたくさんいるだろう。

    だけど。
    だけど。

    あたしは、どうしても、本じゃないとダメ。

    紙に印刷されて、表紙をつけたもの、
    手にとって、自分でめくって、
    絵や文字を受け取るもの。
    そのカタチが何よりも好きなのだ。

    今までは、
    あたしも、自分自身が本を愛しているのは、
    「物語」が好きだから、なんだと思っていた。

    言葉や絵で紡がれる「物語」
    小説や漫画で描かれる「人々の愛や夢や哀しみや人生」
    そのものが、心を揺らすのだと思ってた。

    だけど、
    『海猿』『ブラックジャックによろしく』の作者で、
    好きな漫画家の一人である、佐藤さんが、
    「これからは、WEBで漫画を発表していきたい」
    と表明し、
    もしも、いま、買っているたくさんの漫画や小説が、
    全部、本ではなく、
    インターネット上で発表されて、
    「本屋に本が並ばなくなる日」
    を想像してみたら、
    ものすごく、淋しく、切ない気持ちになったのだ。

    いつか、多くの書籍が電子化されて、
    パソコンや携帯端末で、
    印刷された本よりも、
    ずっと安価に手軽に、たくさん読めるようになっても、
    それでも、あたしは、「本」を買いたい、
    と思う。

    あたしたちが、
    本から受け取っているのは、
    「中身」「内容」だけでは、決してない。

    同じ本でも、
    単行本、新書、文庫、愛蔵版や豪華版、
    など判型でずいぶん印象が変わるし、
    装画・挿画を担当する人によっても、
    同じ物語が全く違うものに感じたりする。
    装丁を担当する人によっても。

    活字の字体、
    文字の大きさ、
    紙の種類・質、
    クロスの色・素材、
    栞の色、
    扉、見返し、遊び紙、帯、函、
    特殊な印刷や、箔押し。

    様々な要素でできていて、
    それ自体が芸術の域に達しているものさえある、本というもの。

    その美しさ、楽しさが、
    書かれた内容に、さらに魅力を加える。

    そのたたずまい、手触りが、
    内容を記憶する手助けとなり、
    ずっと昔に読んだ本を、
    生き生きとよみがえらせる。

    本の中身は、作者のものだけれど、
    それを手がけた多くの人の、
    素晴らしい仕事と愛情が、
    さらに、美しく、物語を彩る。
    手に取った人をしあわせにする。

    そういうことの全部を含めて、本が好きなの。
    それは電子書籍という、データでは、
    代替のきかない領域であると思うのだ。

    だから、本が本でなければいけない理由。
    それを届けるために、
    あたしが古本屋であることの理由を、
    少しずつでも、感じてもらえたらいいなあ。

    今までは、
    本については、
    内容の感想を中心に書いてきたけど、
    「本というカタチ」の良さをわかってもらえるように、
    装丁ブックデザイン
    に関する本。
    見てるだけで楽しい本、
    WEBでは多分再現できない、うっとりするほど綺麗な本、
    装丁にユニークな工夫がされている本、
    など、
    「本の外側」
    をテーマにした記事も書いていきたい、
    ということでのカテ(カテゴリー)新設である。

    不定期連載になるけど、
    良い本を、あれこれ紹介していこうと思ってるから、
    どぞ、よろしくなのだ。

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